ゲド戦記IV アースシーに吹く風

 帰還のときからの魔法体系への疑惑が物語の表面にまであらわれ、世界の構成の重要な要素だった生死について、魔法使いの倫理が逆転してしまった。全くアースシーの世界観が揺らぐ衝撃的な内容だった。良くも悪くも世界を体系化していた殻がやぶれ、真実と混沌に近くなっていく。恐ろしさと目覚めを感じさせるエンディングになっている。これで今書かなければならない物語を書き終えたのか?答えを教えてくれるような作者じゃないのだな。
 さて今回の主人公は妻に先立たれ、妻や死者の影に怯えながら生きている。そして困難の末に彼にしか出来ない為すべき事をしていなくなる。ゲドのように硬い意思も膨大な才能も持たず誰からも評価されることはない、あまりに過酷で孤独な一生に思えた。この無言でせまってくる運命は誰にもやってくるというのか?妙に孤独を感じてしまうのは、私が女々しいからだろうか?