ゲド戦記I, II 影との戦い、こわれた指輪 -アーシュラ・K・ル=グィン:

 前から読みたいなあと思っていたけどカードカバーしかなくて読んでいなかった。ゲドIは英雄譚の収録という形式をとっている。文体も人物の行動を中心にした修飾の多いものになっている。所有せざる者に似た感じの文体で、かなり初期の作品なのだろうな。すでに主人公と影の戦いとして人間が善悪を含んだものであることを打ち出している。不気味な影に脅かされる少年時代も無力になって影に追い掛け回されるのも怖い、子供頃に読んだら夢にでてきそうだ。何もない辺境で影を受け入れるまで、永遠に戦い続けなければならないのも暗示的だ。アースシーという広大な海の広がる世界を旅することは楽しいことだしだし寂しいことかも、そのきっかけとなったゲドの物語だった。カラスノエンドウのような友人を持てたことが救いだ。
 割れた指輪では、墓守の巫女の前にゲドは大胆不敵な墓泥棒として現れる。アルゴー号の冒険に似ているから巫女さんが捨てられるのでないかと心配だった。最後にずいぶんのページを割いて巫女さんのこれからの行く先を決めたのでほっとした。それでも失恋になったけど。ところでみせかけの魔法と本物の魔法を区別している。なんかFateで魔法と魔術を区別しているみたいで笑った。やはり影響を受けているのだろうか。